2017. 07. 18  
4日 オーチャードホール
マーラー 千人の交響曲  山田和樹指揮 日本フィルハーモニー交響楽団
武蔵野合唱団 栗友会合唱団、東京少年少女合唱隊
林 正子(S)、小林沙羅(S)、清水華澄(A)、西村 悟(T)、妻屋秀和(B)他

昨年の7月からこの6月までの1年間に、「千人」を3回も聞いた。評論家じゃあるまいし、こんな大曲を3回も聞く人はあまりいないと思う。
おかげでこの曲の面白さや不思議さが、少し分かってきたような気がする。

今回は、武蔵野合唱団が第一コーラスを、栗友会合唱団が第二コーラスを担当するという演奏形式で、夫々の特徴を活かした組み合わせだったと思う。

武蔵野は力強さが特徴、と言ったら言い過ぎだろうか、とりわけ男声のパワーは圧倒的で、中でもテノールはものすごい!コバケンの指揮で聴いたモツレクのメリスマは、笑っちゃうほどのド迫力と鋭い切れ味、まさに驚嘆ものだった。
一方の栗友会は絶妙のバランスと、ハーモニーの美しさだ。初めてこの合唱団の第九を聴いたとき、ノイズっ気のない伸び伸びとした響きに痛く感動したものだ。

これらの特徴を存分に活かすために、この組み合わせにしたものと思われるが、結果は大成功、迫力と繊細さが見事に表現されていた。
歌詞の翻訳を読んでも、いろいろな解説を読んでも、曲の奥深さや、精神性みたいなものはさっぱり分からないが、壮大な音楽にどっぷりと浸っているだけでまことに心地よい。

オーチャードホールは、比較的どこの席でも同じように聞こえるが、今回は男声がステージ奥の高見に集中していて、メガホンの口元で歌っている感じになるのだろうか、ともするとコーラスがオケを圧倒するような場面もあった。
それだけに、冒頭 ff で出てくる “Veni” の迫力は凄まじく、一気に千人の世界に引き込まれてしまった。
驚いたのは、大人のコーラスが暗譜だったこと。これまでの例だと歌う範囲が限定されているためか、少年少女が暗譜ということは多かったが、今回は逆だ。
ヤマカズ先生、ずいぶん思い切った要求をだしたものだ。このラテン語とドイツ語による長大なテキスト暗記するだけでも大変な努力を強いられたことと思う。尤も、聞いている側は何語であろうと、ほとんどの人が分からなかったと思うので、失礼ながら案外うやむやでもよかったのかもしれない!
東京混声合唱団をはじめ、合唱指揮を得意とする山田和樹だけに、楽譜を持った時と暗譜とでは、声の飛び方がまるで違うということを意識したのだろう。
ソリスト陣がもう少しクリヤーだと良かった気もしたが、あえてオケとコーラスの中間に配置されていたので、声が埋もれることはある程度、計算ずくだったと思われる。

総じて極めて心地よく、しかも山田和樹のマーラー愛が強烈に伝わってくる感動的な演奏だった。

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2017. 06. 09  
19日
交声曲「海道東征」
北原白秋作詞 信時潔作曲
大井剛史指揮東京フィルハーモニー交響楽団
独唱:幸田浩子(ソプラノ)、小原啓楼(テノール)他
合唱:栗友会、杉並児童合唱団
東京芸術劇場コンサートホール

初耳の曲だ。
我が家には信時潔集成というSP音源から復刻されたCDアルバムがあり、その中に収録されているのだが聴いたことがなかった。
信時潔といえば高校時代「あかがり」とか「子等を思う歌」を合唱で歌ったことがあり、親しみ易い旋律で、いまでも時々思い出す。
この海道東征も同様で、きわめて分かり易い旋律の集合体だ。残念ながら白秋の詩は、擬古文というそうだが、古い文体でよく分からない。
神代から建国に至る皇軍の活躍を詠った壮大な叙事詩に、皇紀二千六百年奉祝のために作曲されたもの、ということらしい。
美しい抒情的な部分と勇ましい戦意高揚と思しき部分がホボ交互に現れて、否が応でもワクワク感が刺激される。戦後しばらくは封印されていたというのもむべなるかなと思われる。
我が家のCDは1941年の録音で、まさに戦意高揚のための演奏といえるもので、力強いリズムを強調した軍歌調だ。
それに較べて今回の演奏は美しさの部分が強調されていたように思われる。雑味のない栗友会の合唱はもちろん、ソリストの面々も全く力みのないまろやかな歌い方で、「ヤアハレ」という掛け声(普段聞いたことはないが)も柔らかく、高貴な(!)印象だった。
字幕が投影されていたが、プログラムに記載されていたものと同じで、せっかくなので現代語に翻訳されたものを流してほしかった。
アンコールの形で演奏された「海ゆかば」では、起立して唱和する人もいたが、ステージの上で歌った人たちは、どんな気持ちで歌っていたのだろうか。
開場時間が長めにとられていたが、コーヒーラウンジは黒いスーツ姿で談笑する紳士でいっぱいだった。客席も黒服が多く、少々緊迫感のようなものを感じたが、みなさん柔和な顔をされていたので、特に威圧感はなかった(笑)。

海道東征
2017. 04. 04  
国技館五千人の第九

2月19日(日)両国国技館
下野竜也指揮新日本フィルハーモニー交響楽団
ソプラノ:半田美和子 アルト:清水華澄
テノール:糸賀修平  バス:福島明也
合唱:国技館すみだ第九を歌う会5000人

国技館入場は初体験だ。
以前、武道館のコンサートでひどい目にあったことがあるので、ちょっと不安だったが、まったく杞憂に過ぎず、むしろ普通のコンサート会場よりもスッキリしていたくらいだ。
今回指定されたボックス席というのが実に楽な椅子席で、喫茶店でくつろぎながら観覧しているような素敵な場所、相撲の足先まで確認するには遠いかもしれないが、音楽鑑賞には文句なし、ゆったりと楽しむことができた。
合唱団が客席の半分以上を陣取っていて、ソプラノとアルトは50メートル位離れているにも関わらず、時差によるモヤつきもなく不思議なほどクリヤに聞こえた。
オケには軽くPAがかかっていたようだが、全く違和感がなく、33回目ということで、音響さんも手馴れているのだろう。
オケ鳴らしの達人、下野竜也の指揮で響きの豊かなたっぷりとした第九が楽しめた。
ソリスト陣は、テノールの糸賀は初めてお耳にかかったが、他は耳馴染みのある人ばかりで文句なし、特にバスの福島は、記録によると第12回からホボ連続出場で、ベテラン過ぎるのではないかと思ったが、この会場の響きは知りつくしているのだろう、歌い出しも堂々としていて気持ち良かった。

変わっていたのは、ソリストの入場だ。
通常、初めからオンステしている場合もあるが、2楽章が終わったところで入ってくることが多い。ところがここでは、3楽章の途中で曲を中断することなく、通路を通って登場したのだ。
控えに入る力士さながらの光景は国技館ならではで、ちょっと愉快だった。

第九演奏の前には通常、前菜のような感じでオーケストラが何か一曲小品を演奏することが多いが、今回は何と合唱の栗友会がア・カペラで登場した。
曲目は1:花(滝廉太郎)2:ことばは魔法(信長貴富)3:MI・YO・TA(武満徹)4:地球へのピクニック(三善晃)。
いずれも比較的小編成で歌われることが多いと思われるが、栗友会は、大編成にも関わらず、しかも、このバカでかい会場にもかかわらず、全く曇りのないクリヤーな演奏を聞かせてくれた。
耳慣れた「花」は初めて聞く編曲だったが、文字通り流れるように美しく、季節柄、場所柄!ということもあり大変心地良かった。
また、小人数で歌ってもモヤモヤしがちな武満も、さわやかとさえ思えるほどすっきりと歌われ、素晴らしかった。
栗友会をご本尊の栗山文昭が指揮した演奏というのは、初めて聞いたような気がするが、メンバーからの信頼がいかに厚いかという、そんなことを見せつけられたような演奏だった。
この4曲のあとにオケが入って、アイーダの凱旋行進曲が歌われたが、第九への橋渡しとして、的確な演出だったと思う。

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2017. 01. 28  
マーラー「一千人の交響曲」
パーヴォ・ヤルヴィ指揮NHK交響楽団
栗友会合唱団、新国立劇場合唱団、NHK東京児童合唱団
エリン・ウォール(ソプラノ)他ソリスト7人
9月8日 NHKホール

ダブル編成に近いオーケストラ、8人の独唱者、三組の大合唱団、総勢500人規模の大所帯、これを一人で仕切るヤルヴィさん、さぞやたいへんだろう、というよりさぞいい気分だろうと思われる。
オケの壮麗な響きと合唱の美しいアンサンブルと迫力は、現在得られる最高レベルのものに間違いない。大きな音量は出ても、ゴチャゴチャになって何をやっているのかよく分からないという演奏が多い中で、どこまでいってもふっくらとした透明感が失われないのは、オケや合唱の技量もさることながら、ヤルヴィの統率力が並大抵のものではないということを感じさせるものだった。
独唱は初めて聞く人ばかりだったが、いずれも力強く安定感のある歌唱を聞かせてくれた。
歌い慣れているのか、この長大な曲を、譜面台を下げてホボ暗譜で歌っている人もいた。
N響の90周年記念公演ということで、通常の定期演奏会と異なり、1回だけの公演なのは、何だかもったいない気がした。
余談になるが、今回の演奏会では隣席に盲導犬を伴った人がいてちょっと驚いた。
私が座るとすぐに話しかけてきて、バンダや児童合唱の位置とか山田和樹のマーラーツィクルスについて、みたいな話題を投げかけてきた。
隣がどんな人物なのか確認したかったのだろう。
何より驚いたのは犬だ。座席は1階ホボ中央の前から5列目、大音響がまともに飛んでくる。犬の聴覚は人間の何倍も高いというのに、私の足に触れていたお尻が、1時間半、ほとんど動くことがなかった。
終演後、何事もなかったように穏やかな顔で主人をエスコートして帰って行った。
音楽で感動、犬で感動、何とも不思議な体験だった!


ドボルジャーク「スターバト・マーテル」
ハルムート・ヘンヒェン指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団
松田奈緒美(ソプラノ) 池田香織(アルト)
松原 友(テノール) 久保和範(バス)
栗友会合唱団
10月21日 すみだトリフォニーホール

宗教に関してはあまり熱心とは言えないが、このスターバト・マーテルは実に美しく大好きな宗教曲のひとつだ。
アンダンテコンモートと指定された曲の冒頭はかなり遅めに始まった。2分の3拍子で書かれているためか、指揮者によってこの入り方はかなり違った印象を受ける。
第6曲に置かれたテノールのソロは、甘美とさえ思えるほど美しいが、ここでは逆にやや早めのテンポで軽やかな感じ、好みとしてはもう少しゆったりと粘ってほしかった。
4人のソリストはいずれも中堅どころで力量としては申し分なかったが、歌い慣れていないのかかなり硬さが感じられた。
合唱は、歌い慣れている訳はないと思うが、いつもの通り適度な力強さでキッチリとした美しいアンサンブルを聴かせてくれた。
それにしてもこの栗友会という合唱団は凄まじい、とてもアマチュアとは思えない活躍だ。
2016年内に私が聴いただけでも、新日フィルと1月にブリテンの「戦争レクイエム」4月にラベルの「ダフニスとクロエ」、新響と4月にマーラーの「復活」、5月には三善 晃の「レクイエム」、7月には新日フィルと単独で「千人の交響曲」そしてこの9月と10月だ。
更に「第九」も数回歌っていた。
スゴイ!!
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2016. 08. 19  
女声合唱コンサートTrois Beaux Bouquets
29日(金)第一生命ホール

フランス語は辞書の引き方もよくわからないが、「三つの美しい花束」と解釈しておく。
その解釈にたがわず、女声合唱3団体による、きわめて上質な美しいコンサートだった。
赤坂有紀指揮;翠声会Ⅱ組(埼玉県志木市)、横山琢哉指揮;木声会(仙台市)という栗山文昭氏所縁の2団体と、東京の「彩」(栗山文昭指揮)のジョイントコンサートで、透明でノイズ感のない響きと、揺れの少ない安定感は共通している。
これは、よく行われる機械的な発声練習からは得られないもので、何か音楽的な心が培われる訓練がなされているのではないかと思われる。
それぞれにご贔屓の作曲家がいて、委嘱作品が多いことからも、演奏技術の高さがうかがえるが、今回は信長貴富、吉川和夫、池辺晋一朗が選ばれていて、似たもの合唱団とはいえ曲想の違いを見事に描きだしていたので、文句なしに楽しめた。
締めは三者合同演奏、栗山氏の指揮で超人気曲の「水のいのち」、女声合唱で聴くのは初めてだった。なんと清涼な流れなのだろう、まろやかな起伏を伴って柔らかに、下流に行くほど綺麗になってしまう、芥なんか微塵もない水のいのちだ。
合同での練習はほとんどできなかったと思うが、全く違和感がなかったのはさすがだった。
この曲に関しては、男声の、壮大で起伏の大きな演奏に魅力を感じていたが、これだけ美しいと女声も悪くない、と思わされた演奏だった。

三団体コンconvert


プロフィール

がんも

Author:がんも
ヨハン・シュトラウスと女の子が大好きな老人です。
歌うことが大好きです。イタリア民謡とかトスティとか。
小旅行も大好きです。新緑や残雪の山並みを見るとドキドキします。

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